2010/4/19
 last update: 2010/4/19
 
福岡県精神神経科診療所協会
会長 三原伊保子

明治以降の長い精神科医療の歴史のなかで、受診なさる方にとって、今ほど精神科が身近になった時代はなかったのではないでしょうか。その一端を私どもメンタル・クリニックが担っているという誇りを持ちつつ、質の高い医療を提供するべく努力していきたいと思っております。

<精神科診療所の日常の紹介>

今回はとある精神科診療所の木曜日の朝を覗いてみましょう。
みなさんのプライバシーを守るために、事実そのものではありませんが、それに近い風景を書いてます。
9時に診療開始です。名前を○○さーんと医師がよびます。

医師は机の上にその方のカルテを広げて待っています。医師一人だけでほかには誰もいません。外には会話が聞こえないように扉は全部閉じられています。

この患者さんはもう2年くらい通ってきています。2週間から4週間おきに来て、医師と会話をし、薬をもらっています。ひとり暮らしの未亡人です。快活で、仕事の好きな、友人もたくさんいる人でしたが、ひとのお世話を熱心にしているうちに、いつも当たり前にできていたことができなくなって、大変不安になってしまったのです。ちょうど、その方の甥がうつ病の治療をその診療所で長年続けていたために、その診療所にかかってみようということで初めて来院されたのです。

その方と医師は結構気楽に会話しています。率直に今の状態を話し、生活のありかたと薬の効果などを中心に今後どうするかを検討しあいます。調子は悪くないので、時々、お薬を忘れるのですが、思い出して2日以上は空けないようにしていますので、問題はありませんとその女性は医師にいいます。


医師は、もうお薬の量も少なくて済むようになりましたから、1月のうちにどのくらい薬が余るか見ましょう。それを参考にもっと薬を減らしましょうといいます。夕方1回、欝気分を改善する薬と、気を楽にする軽い安定剤を、どちらも1錠の半分ずつ、これまで飲んできて、経過はいいようです。今度は1月あとに来てくださいという医師の指示で、二人は挨拶をかわし、女性は部屋を後にしました。

医師は処方と会話の内容と所見を書いたカルテを受付に渡します。この間、約8分くらいでした。

次に△△さーんと医師が叫びますと、50歳台の女性が部屋に丁寧な挨拶をしながら入ってきます。笑顔がかわいいほっぺの赤い小柄の女性です。ご自分が起こした事業に集中し、なかなか後継者にめぐまれないまま、またご本人もひとに仕事を任せられないまま、さらにご自分の肉親の介護を一人でやってきて、頭が働かない、体が思うように動かないということで診察にこられました。診療所の医師とは以前からの知り合いだったので、その診療所を選ばれたのですが、知り合いだった分医師の指示、忠告を軽く考えてしまい、きちんとした治療が遅れたのでした。

この方は、1年半近く通っています。薬の副作用の出やすい体質で、筋肉がこわばったり震えたりしました。燃え尽きてしまったタイプの鬱病と診断されています。おもに、体の動きがままならないこと、腕を動かすととても痛むことなどを話しています。はやく仕事に復帰したいという気持ちを医師にいいますが、そのあせりが、回復を遅らせるのですよと、医師はいつもいうことをその日もいいます。ただ、もう少し薬を合わせないと、思うように動けませんね、すこし、処方を変えますよ、副作用止めをかえて、筋肉の症状をよくしましょうといい、隣の部屋で血圧を測ってくださいとドアーを開けて、隣の部屋のソファーに誘います。その間、女性の動きを観察しています。やっぱり、ちょっと硬いですね、動きが、といい、今度の薬で、2週間みましょうといって、診察室にもどります。女性のそばにふっくらとした笑顔の女性の看護士が立ち、血圧を測らせてくださいね、と左腕を取ります。

部屋にもどった医師はカルテに筆を走らせ、処方を別となりの窓口の女性にわたします。この間約十分です。

このあとは次の機会にまた。


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